

「ツカミがヘタクソ」で覚醒…「金の国」が考えるコントの作り方
2022 M-1,KOCへの道:金の国【後編】
笑顔と坊主がトレードマークの渡部おにぎりと漫画研究会出身でクールな桃沢健輔。ここ最近、賞レースを賑わせているお笑いコンビ・金の国の二人だ。昨年は「ツギクル芸人グランプリ2021」、「マイナビLaughter Night」のグランドチャンピオン大会で優勝。今年は渡部が「R-1グランプリ」で3位タイとなった。
勢いに乗るコント師は、コント日本一を決める大会「キングオブコント」でも結果を残すことができるのか。飛躍のきっかけとなった先輩芸人のアドバイス、ユニットライブでの気付き、スタートしたばかりのラジオ番組や前大会王者・空気階段に対する思いなど、前進し続ける二人の核心部分に迫る。

「ネタのツカミがヘタクソだな」
――桃沢さんは芸歴1年目の時点で、周囲からネタのアドバイスをもらうスタンスだったようですね。「自分の世界観を大事にしたい」と尖っている時期はなかったんですか?
桃沢:大学時代に漫画研究会ってところにいたんですけど、絵がうまくならない人ほど描く量が少ないし、数もこなさないんですよ。「こういう絵が描きたい」っていう目標だけデッカくて。そういうのを見てるから、「数をこなす」と「意見を取り入れる」は、何をやるうえでも絶対必要だなと思ってました。
養成所でいくら評判がよくても、レジェンドと比べたら確実に実力不足じゃないですか。だったら、自分たちより上の人に聞いたほうが手っ取り早い。逆に僕は、周りの意見を聞かない人のほうがよくわからなかったですね。自分が面白いと思った人の意見は絶対に取り入れるべきだと思う。
――「明らかにウケが変わった」と感じたのは、誰のどんなアドバイスでしたか?
桃沢:サツマカワRPGさんから、「ネタのツカミがヘタクソだな」って言われたことですかね。そのうえで、さらにいろいろ話してもらった時に「もっといい方法がある」とかじゃなくて、「ヘタクソなのか」と思って。そこからいろいろ考えて、ツカミ方を変えたら同じネタでもウケがぜんぜん違ったんですよね。
それも「下北GRIP」(「下北スラッシュ」で毎週金・土・日に行われている無料ライブ)の2部と3部の間に言われて、3部で試してみたら反応が変わった。それが「見送り」ってネタなんですけど、そこからだいぶ変わりましたね。だから、「サツマカワさん、すごいなぁ」っていう。
――渡部さんは演技力を磨くうえで意識したことってありますか?
渡部:もう最初の頃から桃沢くんが台本書いてくれて、演技の方向とかっていう演出も全部やってくれてるんです。たとえば「この演技やる時は、バナナマン・日村(勇紀)さんのこの演技をイメージしてやってみて」とか、「ハナコ・岡部(大)さんのこの表情、目の開け方を意識してみて」とか。
そういうアドバイスを受けて、実際に見てみたりしてちょっとずつって感じですかね。僕自身は養成所のクラスでも、「演技ヘタ」ってすごい言われてたんですよ。僕が何かやると笑われちゃうっていう。
桃沢:僕が言ってたわけじゃなくて、主に周りから言われるんですよ(苦笑)。
渡部:けっこうショックで、ずーっと悔しいなと思いながらやってました。今はちょっとずつですけど、「演技うまいね」とかって言っていただけるようになったからすごい嬉しいです。

目先のお笑いに走るコントは好きじゃない
――ハートフルなラストを迎えるコントは、ここ数年で主流になった印象です。お二人は最初からそういった展開に抵抗はなかったですか?
桃沢:一つの話にオチをつけるために方向を選択してるだけで、「いい話にしよう」と思って作ったことがあんまりないんですよね。テレビでやるとなった時に採用されやすいというか。何本かネタを出して「それにしよう」って使ってもらえるケースがちょいちょいあっただけで。
むしろ、あんまり優しいネタの印象が強くなると、そうじゃないネタがウケづらくなってくるから嫌だなと。けっこうそうじゃないネタもいっぱいあるんで。
――お二人が優勝した「ツギクル芸人グランプリ」で2本目に披露した「満員電車」は、“優しいネタ”と言われているものだと思います。あのネタは、テレビを意識して選択したところもあるんですか?