

原発族への六つの手紙 アーサー・ビナード(詩人)

アーサー・ビナード(詩人)
'67年、米国ミシガン州生まれ。NYのコルゲート大学で英米文学を学ぶ。卒論研究の際、日本語に出会い、興味をもち来日。日本語での詩作、翻訳を始める。'13年、絵本『さがしています』(童心社)で第44回講談社出版文化賞絵本賞受賞。ラジオ番組『吉田照美 飛べ!サルバドール』(文化放送)で木曜レギュラーをつとめる
Photo:小檜山毅彦
「原発族よ、〝言葉のペテン〟で隠蔽するな」
福島第一原発の事故後もなぜ母国に帰らず、日本に残り続けるのかという質問をよく受けます。それは、逃げても何の解決にもならないからです。私の故郷・米ミシガン州デトロイト近郊の、いとこの家から10㎞も離れていない場所にあるエンリコ・フェルミ原発内の実験炉が'66年にメルトダウンを起こしています。また、母が住んでいるオハイオ州エリー湖のほとりには、ひどく老朽化したデービス・ベッセ原発がある。福島でメルトダウンしたからアメリカに帰って、そこでまた近くの原発が事故を起こしたら? 西へ東へ、風下にならないところを探し歩くだけで本当にいいのか? そう自分に問いかけた時、逃げることより闘うことを選ぶべきだと思ったのです。