

【特集】10years after「9.11」に立ち向かった人々の現在

ニューヨーク州立大学医学部のベンジャミン・ラフト教授は、2001年9月11日、同時多発テロが発生した当初、被害者の救援・救護に当たったレスポンダー(緊急救援隊員)の口述をまとめ、あの惨事から10年の節目に『WE'RE NOT LEAVING』という一冊の本を上梓した。彼が診察した約6000人の中から135人にインタビューした集大成である。バラバラの遺体やワールドトレードセンター(WTC)から飛び降りる「ジャンパー」を目に焼き付けてしまった人、埃やガス、燃えるプラスチック素材から出る有毒ガスを吸い込んで呼吸器系に癌を発病させた人も多い。著書のタイトルのとおり"逃げ出さなかった"彼らの心理状態をまとめる上で、ヒューマン・ストーリーが重要だというラフト教授は、こう語った。
「彼らの多くに共通しているのは、みな謙虚であるということ。9.11に直面したからといって、自分が特別な行為をしたとは感じておらず、自らに課された職務を果たしたと捉えていました」
これから紹介するのは、9.11の現場から逃げ出さなかった3人から聞き取った、あの時からの10年をいかに生きたかという、「生の記録」である――。
インタビュー・構成/飯塚真紀子(在米ジャーナリスト)