

プロ野球特別読み物 「新天地で咲いた」男たちの復活ストーリー
戦力外、トレード、現役ドラフトからなぜ再生できたのか?
細川成也(24)
中日ドラゴンズ

「力の抜きどころ」を覚えて中日の主砲に
’22年のドラフトを経て126人の若武者が各球団の門を叩く一方で、129人に戦力外通告が言い渡された。所属球団で将来を嘱望されながら、なかなか芽が出ずにファームでくすぶったまま引退していく選手たちは多い。そんな中、トレードや戦力外、現役ドラフトで移籍したチームでチャンスをつかみ、「新天地で咲いた」男たちがいる。中日で中軸を担う細川成也(せいや)(24)がその代表的な存在だ。
細川は’17年、ドラフト5位でDeNAに入団したが、昨年までの6年間でわずか6本塁打、打率.201と、首脳陣の期待に応えられていなかった。当時一軍打撃コーチを務めていた坪井智哉(ともちか)氏が話す。
「ルーキーイヤーから、細川の『遠くに飛ばす力』には目を見張るものがありました。ただ、インコースの速球に対応しきれず、アウトコースの変化球にも手が出てしまうなど、バットを振り回していた。代打でチャンスを与えても3球三振で帰ってくる。スタメンで使うには難しい選手だったんです」
ところが、昨年オフの現役ドラフトで中日へ移ると、ここまで.319、10本塁打(数字は6月27日時点。以下同)の大活躍。5月には月間MVPにも輝き、シーズン前半戦途中で過去6年間の通算本塁打数、打点数、安打数を超えてしまった。「開花」の要因はどこにあるのだろうか。
「もともと、ウエイトトレーニングやスイングの練習量は球団でもトップクラス。課題はメンタルでした。DeNAは、外野に佐野恵太(28)や筒香嘉智(31)、タイラー・オースティン(31)がいる厳しい環境でした。彼らに追いつこうと力んでしまっていたのでしょう。ところが、今シーズンの細川は、すごく楽にスイングしている。所属チームが変わったことで心境に変化があり、『力の抜きどころ、入れどころ』を覚えたのだと思います。
先日、『チャンスが来たね』と本人にメールしたら、『これからもたくさん練習します!』と返ってきた。力みが消えて、練習量は増えたのですから、今シーズンに飛躍したのも頷けますよ」(同前)