

1回5000万円でがん消滅 CAR-T細胞の真実
国内製造・販売が認可 日本人開発者:新潟大学医学部・今井千速准教授医師が語った
取材・構成:青木直美(医療ジャーナリスト)

新潟大学医学部准教授の今井医師。「キムリア」の日本での承認スピードは開発者本人にとっても驚きだったという
「私がCAR―T細胞の研究に関わっていたのは、’01年末から’05年にかけて。当時はCAR―T細胞の黎明期だったので、海外の学会でもとにかく注目度が低かった。まさか自分が現役の医師であるうちに保険認可が下りる薬剤が誕生するとは思ってもいませんでした。これだけスピーディーに承認された背景には、米国の治験結果から従来の抗がん剤治療では考えられない治療効果が続々と発表されたところが大きい。『難治性の急性リンパ性白血病』の患者さんの8割、『難治性の悪性リンパ腫』の患者さんの5割が、CAR―T細胞の投与から3ヵ月以内にがんが消える状態に至った。この顕著な治療効果は、医学界の常識を覆すものでした。でも、最初の第1世代といわれる細胞の構造モデルでは、臨床的な効果は得られませんでした。これだけ急激に治療効果が高まったのは、CAR―T細胞の研究が一気に進んだから。これにより、爆発的な変化が起きたんです」
そう語るのは、新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野の准教授・今井千速医師(50)だ。