

卵子と精子の時代 第4回 出番待つ凍結精子
撮影・文/大西成明
マイナス196℃の超低温に保たれた精子保存用コンテナの蓋が開けられると、白い水蒸気の煙の中から、チューブに入った凍結精子がその姿を現した。ここは、「はらメディカルクリニック」(東京都渋谷区)の精子バンクである。無精子症(精液中に精子がない)や、精子に受精能力がないと診断された夫婦が、第三者からの提供精子を妻の排卵時期に合わせて融解し、子宮内に注入するAID(提供精子を用いた人工授精)。全国の4割近くのAIDがこのクリニックで実施されている。一般男性のなんと100人に一人が無精子症といわれているが、精子提供に対する誤った認識から治療に踏み出しづらい現状がある。