

「必要ないものはすべて省く」お笑いコンビ・キュウが語る美学
2022 M-1、KOCへの道:「キュウ」【後編】

“非日常的な会話”を武器とした漫才で、ネタ番組や賞レースでも存在感を示しているお笑いコンビ・キュウの清水誠とぴろ。彼らの特異な世界は、毎年開催される単独公演でこそ堪能することができる。昨年6月には、オンラインサロン「研Q室」を開設。これまで以上にネタ作りにかける時間が増えたという。
そんな彼らの活動方針やルーツとはどんなものなのか。「研Q室」での活動やネタの作り方、別ジャンルから影響を受けたという単独ライブの演出、昨年のM-1王者・錦鯉に対する思いなど、唯一無二の世界を形成するコンビの核心に迫る。
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「研Q室」は賞レースにもいい方向に
――昨年6月にオンラインサロン「研Q室」を開設されています。1年ほど経ちますが、現時点で手応えは感じていますか?
ぴろ:今の僕たちからしたらけっこう会員さんも入ってくれてますし、「この人たちを喜ばせよう」っていう対象がはっきりとしたなっていうのはあります。それと、「毎月1本ネタ作り配信」っていうのをやっていて。会員の方からもらったテーマをもとに毎月1本ネタを作って、3カ月に1回サロン内のライブをやるのも楽しい。単純にネタを作る本数がめっちゃ増えましたね。
清水:ぴろが言ってる通り、ネタをいっぱい作れてるのもいい循環だなと思いますし、ファンの方の声がダイレクトに届いてくるから、単純に嬉しいっていうのもあります。
あと、頻繁に新ネタをおろせるっていうのが今すごく楽しくて。僕、本来はネタ合わせって大嫌いなんですよ。ネタ覚えたりするのも面倒くさいなって思うぐらい。とくに単独ライブは一気に9本ぐらい覚えて、その中のネタを1年ぐらいやるのがルーティンみたいになってたんです。
それが、サロン内のライブで新鮮な気持ちに立ち返れたというか。昔の感覚を取り戻せた感じがするんですよね。
ぴろ:サロンを始める前は、単独ライブのためにすべて時間を使ってましたからね。最初のほうは年2回やってて、基本的には一気にそこでネタをおろすんです。単独ライブのためにネタ作って、終わったらまた次のネタを作り始めるみたいなルーティン。今はもっと作るようになったからけっこう忙しくはあります。
清水:このスパンでネタ考えるのは、ホンマに大変やとは思いますね。
ぴろ:でもそこからいいネタもできてくるし、頻繁におろす機会もできたから、M-1とか賞レースにもいい方向に働いてると思います。しっかり結果を残して、どんどん会員も増えていくといいですね。まだ今は「キュウの株を買って持っておきたい」って人たちが集まれる場所を立ち上げたばかりの状態ですけど、これから本当に「始めて良かった」って思えるようなサロンになっていくと期待してます。

キュウは“面白い会話”を作ってる
――ネタはお二人で話しながら作るそうですね。単独ライブを想定してテーマを先に決めてからネタに取り掛かるんですか?
ぴろ:基本的には単独ライブの構成とかパッケージ、イメージ、ストーリーっていうのを決めてから、それに合うようなネタを作ってます。今はそれとは別に、サロンのほうで毎月1本。やっぱりネタが大事というか、“ネタの人”っていうイメージは大切にしたいなと思ってます。
――ネタの仕掛けがすごくよく練られているなと感じます。最初はどんなところから作っていくんですか?
ぴろ:ネタによりますね。最初にボケから作り始める時もあれば、この言葉で面白くしようとか。その時によるかなっていう。
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取材・文:鈴木旭
フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。2021年4月に『志村けん論』(朝日新聞出版)を出版。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/
撮影:スギゾー